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概要

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Saga University Library Bulletin,No.41,October 2017医学分館の現況と課題副館長宮本比呂志副館長(医学分館長)に着任して1年が経過しました。この1年間の医学分館での取り組みを振り返り、医学分館の現況と課題について述べたいと思います。鍋島地区にある附属図書館医学分館は、旧佐賀医科大学附属図書館として1980年に建設されました。築後37年が経過し、耐震化率は基準を上回っていますが、老朽化、狭あい化がすすんでいます。利用者に安全・安心な環境を提供し、また太陽光発電等の導入による省エネルギー対応施設として、大規模な改修工事が必要な状況です。建築当時の図書館利用では想定されていなかったラーニングコモンズ等のスペース対応や、災害発生時におけるBCP(事業継続化計画)としての図書館の役割も最近は重要視されています。これらに対応できる施設として機能強化工事の必要も出てきました。そこで昨年度は、大学の施設整備事業として「医学分館の改修・機能強化工事」を河野課長(当時)の発案で大学本部へ要望しました。しかし、大学全体の中での優先度は低いとの大学執行部の判断で、要求はかないませんでした。「医学分館の改修・機能強化工事」については今後も継続して要望していくつもりです。大規模な改修工事は無理でしたが、この1年間で、私が力を入れたのは、安全・安心な医学分館にするための施設整備です。学生の「24時間無人開館を実施してほしい」という強い要望に応えるために、防犯システムの整備を行いました。入退館自動ドアの施錠管理システムの更新、防犯カメラの増設、そして15箇所に非常ベルを設置し、防災センター警備員への通報システムを整備しました。これにより、これまでの午後9時閉館から、午後11時30分閉館(午後9時から午後11時30分までは無人開館)に開館時間を延長することができました。防犯システムの更新により、以前より「安全」な図書館になりましたが、「安心」な図書館になったかは不明でした。「安心」は利用者個々が判断するもので、「安全」と違って基準がありません。学生自治会メンバーから「学生、特に女子学生が安心して図書館を利用できるようになったと言っている」と聞いた時には、防犯システムの予算を調達した際の苦労を忘れるほど嬉しく思いました。今年度から24時間無人開館のトライアルを実施するつもりでした。しかしながら、館内飲食禁止のルールを守らない学生がいるため、24時間無人開館のトライアルに踏み切れない状況にあります。そこで、学生自治会と教育委員会の学生委員を通じて「館内飲食禁止の遵守」についての複数回の周知を行ないました。その結果、最近では館内飲食がほぼ無くなり利用マナーが顕著に改善されました。24時間無人開館トライアルに一歩近づいたと喜んでいた矢先、平成28年度の入館者数が平成27年度に比べて減少していると報告を受けました。開館時間の延長が利用者の拡散になり、期待したほど利用者が増えないことはあっても、まさか減少するとは予測しませんでしたのでショックでした。図書館が利用者のニーズに対応してないことを突きつけられたわけですから・・・利用者である学生と話したところ、図書館資料(本や雑誌)の魅力が薄れているわけではなく、「冷暖房等の空調」に関すること,「館内での飲食」に関すること,「パソコンの利用環境」等の図書館の環境が利用者ニーズに対応してないことが明らかになりました。個人が静かに学習に集中できるプライベート・スペース、雑談や飲食が可能なリラックスできるリフレッシュ・スペースなど、長い時間を過ごすことのできる様々な空間が設置された図書館,いわゆる「滞在型図書館」を学生は求めていました。館内飲食禁止を周知徹底した結果として図書館が敬遠され、深夜0時まで利用できるようになった改修後のPBL学習室や講義室で、飲食しながら勉強する人が増えたようです。勉強の利用場所が学内で分散したわけで、学生全体が勉強しなくなったわけではなさそうです。来館機会の減少により貸出し冊数にも影響が出るでしょうが、借りた図書館資料をPBL学習室や講義室に持ち込み、飲食しながら利用することは禁止していません。積極的に本を借りて勉強してほしいと思います。図書館内にリフレッシュ・スペースを設置して、そこで飲食してもらい、プライベート・スペースやグループ・スペースでは飲食禁止にするような図書館運営ができれば理想的かもしれませんが、現在の医学分館では上述したようにスペース的に困難です。従来から、図書館の多くの本は貸出可能で、自宅で飲食しながら利用されてきたわけですから、「館内飲食禁止」は図書館資料の汚染防止が大きな理由ではありません。食物の匂いや食べるさいの音などが他の利用者の迷惑になること、また、食べこぼしによる害虫(ゴキブリなど)の発生や机や椅子の汚損、そしてゴミの発生など、図書館の施設維持管理の問題から館内飲食禁止にしていることを理解してもらいたいと思います。入館者数の増加、一人当たりの貸出し冊数の増加など図書館利用指標の改善がなければ、24時間無人開館の再開は難しいように思います。ルールを守った積極的な図書館の利用を職員一同でお待ちしています。2