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概要

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HIK「小城藩日記データベース」について地域学歴史文化研究センター伊藤昭弘地域学歴史文化研究センターでは、平成28年より「小城藩日記データベース」の構築を開始し、同年の国立歴史民俗博物館「総合資料学奨励研究」に採用され、研究費および技術的な支援を同館より得ながら、作業をすすめている。佐賀藩に関する史料の特徴として、家臣の家々で作成された日記の多さがある。たとえば筆者がこれまで研究対象としてきた萩藩・松代藩の「毛利家文庫」や「松代藩真田家文書」は、特定の内容・事項についてまとめたいわゆる「一件物」や藩政部局ごとにまとめられた日記・記録類が豊富で、自身の研究に使えそうな資料にアクセスしやすい。対して「鍋島家文庫」など佐賀藩関係史料は、「毛利家文庫」などに比して「一件物」や藩政部局の記録類は少ないものの、家臣の日記が非常に豊富である。佐賀藩の家臣は、その最上位から順に三家・親類・親類同格・家老・着座・侍・手明鑓・徒・足軽と構成されている。三家は初代藩主鍋島勝茂の息子たちである元茂(小城鍋島家)・直澄(蓮池鍋島家)・直朝(鹿島鍋島家)が興し、幕府の軍役を果たすなど大名としての側面を持ちつつ、あくまで佐賀藩主のもとにある、いわゆる「内分支藩」である。親類はやはり勝茂の息子・直弘が興した白石鍋島家など4家、親類同格は龍造寺家の流れをくむ諫早家・多久家・武雄鍋島家・須古鍋島家の4家からなる。以上三家・親類・親類同格は「大配分」と称され、それ以下の「小配分」に比べて給地高が大きく、かつまとまりをもっていた。続く家老(7家)・着座(時期により変動)は藩政の要職をつとめたほか、大組頭として佐賀藩軍制における「組」を統率した。以上のいわゆる「上級家臣」の家々には、多くの日記が伝存している。佐賀藩研究者にとっては「宝の山」であり、筆者もこれまで各家の日記を用い、成果を出すことができた。ただし日記は、上記「一件物」や部局の記録に比べ、家の奥向きから藩政に関することまで、実に多様な内容がランダムに記載されている。そのため筆者のように佐賀藩研究を専業としていたり、ある程度検討する時期を絞り込んでいれば、日記の調査に着手しやすい。しかしながら、たとえば佐賀藩の歴史に漠然と興味があるとか、出身地である佐賀をテーマに卒業論文を書きたい、また何らかのテーマでいろいろな地域の事例を検討し、佐賀藩にも手を伸ばしたい研究者にとって、日記はかなりハードルが高い。前述の「一件物」が比較的多ければ、それぞれの関心にそったタイトルの史料を調査できる。日記の場合、かなりの労力を費やさなければ、欲しい記事の有無すら確認できない。地域学歴史文化研究センターは、多くの研究者が佐賀をフィールドとし、研究が進展することを望んでいる。そのハードルを下げるための手段のひとつとして、「小城藩日記データベース」は発想している。前述のとおり大量に伝存している家臣の日記のうち、管見のかぎり佐賀大学附属図書館所蔵小城鍋島文庫の「小城藩日記」は、その記事目録である「日記目録」が、藩政時代に作成されている。その画像は同館ウェブサイトで閲覧可能(http://www.dl.saga-u.ac.jp/OgiNabesima/nikkimoku.htm)だが、さらに一歩すすめて記事をデータベース化することにより、佐賀藩に関心を持った方が興味のあるキーワードなどによって検索し、面白そうな記事を捜し出す。そして「小城藩日記」の閲覧を考えたり(本データベース内で「小城藩日記」の画像も閲覧可能にする予定)、他の家臣の日記を閲覧する(たとえば蓮池鍋島家の日記は、佐賀県立図書館ウェブサイト(http://www.sagalibdb.jp/komonjo/php/KomonjoSeek.php)で閲覧できる)など、佐賀(藩)研究に足を踏み入れるきっかけとしてもらいたい。ARINO3