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Saga University Library Bulletin,No.39,August 2015私の研究活動における論文投稿の変遷副館長熊本栄一私の研究活動は大学4年の研究室配属の時から始まり、修士と博士の課程を経て佐賀医科大学(現佐賀大学医学部)に赴任して現在に至るまで、40年近く続いている。この間、様々な実験をし、何か新しい現象を発見すれば研究論文として学術雑誌に投稿・発表するという過程を延々と続けてきた。この間に論文投稿の仕方が大きく変わったので、私の場合を例に挙げ、この変化を述べてみたい。少なくとも15年前頃は、国外の学術雑誌に論文を投稿する際には航空便を利用していた。雑誌の編集部へ論文が届くまでに約1週間、編集部から論文受理の手紙が届くまでに約1週間かかったため、自分の論文が無事編集部に届いたことを確認できるのは少なくとも2週間後であった。しかるに現在では論文投稿はインターネットを利用して行われる。つまり、投稿したい雑誌のウエブサイトにアクセスし、まずuser nameとpasswordの登録、次に投稿論文に関連した情報を入力した後に原稿や図をuploadするだけで論文投稿は終了である。その後、論文受理を知らせるEメールが届くので、2、3日で論文が編集部に届いたことを確認できる。編集部が論文を受理した後、雑誌のエディターがその論文を審査するレフェリーを決める。以前はエディターとレフェリーの間での情報のやりとりも郵便だったので時間がかかっていたが、現在はEメールで行われるので、レフェリー決定と論文査読も早い。レフェリーは雑誌のウエブサイトから投稿論文のpdfファイルをdownloadし、多くの場合、2週間以内にその論文に対するコメントを用意しなければならない。エディターはレフェリーのコメントの妥当性を判断して、論文の採択結果をその投稿者にEメールで通知する。このため早ければ結果を投稿後3週間で知ることが出来る。必要に応じて論文を再投稿する。運がよければ、論文を投稿した後1、2ヶ月以内でその採択の可否の最終結果を知ることが出来る。私が航空便で論文を投稿していた頃、採択結果が通知されるまでに1年かかったこともあった。新しく発見した現象の新奇性の程度に応じて投稿雑誌を決める。以前では、何となく学術雑誌のランク付けがあったが、現在、それはimpact factor(IF)の数値の大小として表されている。最近、Open Access Journalとして紙媒体のない新しい雑誌がどんどん作られている。これらの雑誌では、掲載料を著者自身が払う一方、PubMedやGoogle Scholarなどの検索サイトを通して誰でも無料で論文をdownload出来る。IFが割と高い雑誌で掲載料が約20万円のものもある。我々は今年、Wiley社が新しく作ったOpen AccessJournalに論文を投稿したが、キャンペーン期間中のため幸いなことに掲載料は無料であった。また、Elsevier社は多くの学術雑誌を発行しており、我々はこれに論文投稿することが多いが、リプリント発送日を通知するなどの採択後のサービスが良い。以前の学術雑誌の出版社は欧米のものが中心であったが、現在では中国、インド、中東各国など経済発展の著しい国のものが増えている。今後、研究の中心が欧米からアジアなどに移ってゆくかもしれない。2