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概要

hikarino_44

解説現在、全世界で新型コロナウイルスが猛威をふるっているが、江戸時代の人びとは疫病に対し、どのように立ち向かっていたのだろうか。附属図書館所蔵小城鍋島文庫の史料を用いた「小城藩日記データベース」により、事例を紹介したい。このデータベースは、江戸時代250年余のうち、126年分の「日記目録」(小城鍋島家の政治などの記録である「日記」の記事目録)をもとにしており、どんな記事が「日記」(84年分)にあるか、検索することができる。試しに「疫病」で検索すると、約7万点の記事のうち、19件しかヒットしなかった。しかしこのデータベースでは、検索語と関連している語句を自動的に抽出できる。「疫病」ともっとも関連している語は、「流行」である。今度は「流行」で検索すると、92件ヒットした。「流行」の関連語では、「疱瘡」と「祈祷」が気になった。「疱瘡」は天然痘のことであり、一度罹れば二度目はないという知識にもとづき、日本でもいろいろな予防法が考えられ、幕末にはヨーロッパから牛痘法をスムーズに導入できた。「流行」の関連語として、「種痘」も1件ある。安政6年(1859)に天然痘が蔓延したため、小城鍋島家から佐賀藩へ、領民の予防接種(種痘)を要請した記事である。江戸時代、もっとも人びとを悩ませた疫病は天然痘で、その対応のため西洋医学の技術が導入されたことが、データベースからわかる。貴重書紹介近世の疫病-小城藩日記データベースを用いて-一方「祈祷」だが、小城鍋島家は疫病が流行すると、そのつど自領内の寺社や山伏に、疫病を鎮めるための祈祷を命じていた。もともと疫病には、神仏頼みしか手段がなかったのである。他にも患者に対し「施薬」をしたという記事が見受けられるが、事例はわずかである。種痘の導入は、「日記」にみられる唯一の効果的な疫病対策であり、人びとの命を救う、画期的な出来事だったことがわかる。(地域学歴史文化研究センター伊藤昭弘)ひかり野佐賀大学附属図書館報№44 2020年10月ホームページアドレスhttp://www.lib.saga-u.ac.jp/編集発行佐賀大学附属図書館〒840-8502佐賀市本庄町1番地TEL(0952)28-8902 FAX(0952)28-8909佐賀藩へ種痘を要請した記事(3条目)安政6年日記製作株式会社三光