ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

hikarino_44

HIK佐賀大生の皆さん、月並みですが読書の勧めです農学部後藤文之読書の勧めなんて、小学校のころから、いや、幼稚園のころから言われ続けており、何をいまさらかとお思いでしょうが、大学生になった今、ここでもう一度、読書について考えてみるのも、これからの大学生活や将来の職業人としての生活を過ごすうえで意味のあることではないでしょうか。読書の意義、読書の方法などについては、古今東西の高名、無名の方々が星の数ほど論じております。そこにさらに星屑を加えてどうするのだと自問しましたが、ほかでもない佐賀大生に勧めたく、恥ずかしながら私の個人的な拙い読書に対する考えを述べることにしました。読書の効能と言いましょうか、直接的な存在意義として、次の3つを考えたいと思います。それは、「エンターテイメント」、「仕事の補助具」、「生き方の処方箋」です。まずは、理屈抜きにエンターテイメントとしてです。本好きな人(活字中毒者)にとっては、読書とは言うまでもなく無上の喜びでしょう。私は出張に出かけるときには、本をカバンに1~2冊入れていきます。かつては飛行機や新幹線の中で、PCを開き書類を書くことがほとんどでしたが、だんだんと年を重ねるにつれて本を読むようになりました。単に怠けているだけかもしれませんが、本を読んでいる最中にふと外を眺めたりすると、意識があらゆる方向に広がり、研究のアイデアが浮かんだりします。次は、仕事の補助具としてです。私は、大学教員ですので、専門書や論文を読まない日はまずありません。印刷媒体の利点は、10冊以上の本や論文を一度に広げられることです。また、重要な箇所にはすぐにアンダーラインや付加情報を手書きで加えることもできます。このような多事性と同時性は、PCに勝る利点だと思います。ビジネスパーソンとしては、いわゆるハウツーものも大事な本です。例えば、「伝わるデザインの基本」、「科研費獲得の方法とコツ」、「英語論文によく使う表現」などです。ハウツー本の中にはとても役に立つものから???なものまで多種多様ですが、それはあくまでも人によるものです。私にとって???でも、Aさんにとってはすごく貴重な場合もあります。最後は、生き方の処方箋です。本を読むことで他人の人生を疑似体験ができます。私は平凡な人生しか歩んでいませんが、世の中にはとてつもない苦難の中を歩んでおられる人もいます。そのような人たちの人間の存在への洞察は、とても考えさせられることが多いものです。また、哲学書、宗教書、紀行文、古典文学などからは、大げさに言えば生きる目的、生きる意味、人としての在り方などを考えるきっかけを与えられます。読書を通していろいろな考え方に接することによって、自分の価値観とは違う価値観が存在することを感得でき、やがて自分の考えを相対化することができます。世の中で何が恐ろしいかというとそれは、自分を絶対視することです。しかし、自己を相対化することができる人は、他人の言うことに耳を傾けることができます。そうすると、思いもよらぬ良いアイデアと出会ったり、人とのつながりを深めるようになったりして、ひいては人生が豊かになると思うのです。もしもあなたがサッカー好きなら、歴代ワールドカップ得点王の物語や戦術論を読んでみるのもよいでしょう。中国の近代史に興味があるのなら、魯迅や浅田次郎はいかがでしょうか。また、西洋絵画に心惹かれるならば、聖書はどうでしょう。ルーブル美術館に行くことがあれば、大いに役に立つこと間違いなしです(モナリザの前にある大きな絵は?)。佐賀大生の皆さん、まずはリラックスして気の向くままに興味のある本を手に取り、そして読書を一生涯の楽しみとしてください。ARINO3